もの置き場

日々の妄想とかを雑にまとめたブログです。 初めての方はaboutページをご一読お願い致します。

カオここ

『君は君らしくでいいよ』

 

カオル君と知り合ってから3カ月がたった。 ミスプリのためのミスプリ貯金をひったくりに盗られてから、私の人生は180度変わり、私は今や4人の執事の主となっている。 もちろん令嬢修行は続けており、至らぬところを要に叱責されることが日常だ。 
カオル君も、私の大事な執事の一人だ。 彼は感情をあまり表に出さずひょうひょうとしており、最初は嫌われているのかとも思ったが、なんだかんだで私の特訓に律義に付き合ってくれている。 正直私の中学に転校してきたときは驚いたが。 私とは正反対で、何でもできて、かっこよくて、クラスの、特に女子からの人気が高い。 本人は心底嫌そうにしているが、私は、そんなカオル君が私の執事で、仲間であることを心から誇らしく思っている。 
「今日は寒いね、カオル君。 マフラーしなくて大丈夫?」
「…… 大丈夫、アンタこそ鼻が赤くなってるけど。」
ぱっと携帯の内カメラで確認をすると確かに、鼻先が寒さで赤くなっている。
「うわーほんとだ、トナカイみたい。」
「……? なんでそこでトナカイが出てくるの?」
「えっカオル君知らないの?! 幼稚園の時歌わなかった? 真っ赤なお鼻の~って?」
カオル君はきょとんとした顔で、急に歌いだした私をじっと見つめている。
「カオル君でも知らないことってあるんだね。 なんか嬉しい。」
「そりゃあるよ。特にアンタと知り合ってからは解らないことが増えた。」
「私?」
そういってカオル君の顔を覗き込むと、心なしか顔が赤くなっていた。
「カオル君、顔赤いよ、やっぱり寒いんでしょ。 私コート着てるし、このマフラー使って。」
おもむろに自分の首につけているマフラーを外し、背伸びをしつつ彼にふわっと巻き付けると、彼は小声で、
「…なんでこんな気持ちになるのか解らない。 ずっと、君とバルコニーで話した時から、胸が変な感じだし。 こんな気持ち、知らない。」
とつぶやいた。
「えっカオル君体調悪いの?!まだ私の家からそう離れてないし、引き返そうか?」
「いい、いくよ。」
私のマフラーをそっと巻き直すと彼はすたすたと先を歩いて行ってしまった。 ぶっきらぼうで執事らしくないその振る舞いに戸惑うも、私は彼の口角がすこしだけ緩んでいたのを見逃さなかった。