もの置き場

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鏡芽衣+音二郎

『お節介焼き音二郎』

 

「……はあ。」
相談役、川上音二郎は呆れたような気の抜けたような返事をする。
「鏡花ちゃん、その相談、何回目だってんだよ……」
やれやれと大げさに肩をすくめ、真っ赤になっている相談者、泉鏡花の方をちらりと見やる。
「ぅ、うるさいなあっ!! 僕だってお前にこう何回も相談したくはないけど、しょうがないだろ!」
「いやあでもねえ鏡花ちゃん。 『彼女が自分より肉の方が好きみたいだから不安だ』なぁんていう相談を好き好んで聞きたがる奴なんていねえよ……。一回ならまだしも、お前らが付き合い始めてから百回はその相談されてるぞぉ」
「今日で五回目だっ!!大袈裟にしすぎだよっ!!」
全く、とプリプリしながら鏡花は脚を組みなおす。 
鏡花の彼女、綾月芽衣は、本当に肉のこととなるとどうしようもない。 特に牛鍋となると、周りの人なんてまるで全く見えていないかのように、黙々と一人食べ続けてしまう。
「いやあ、鏡花ちゃん。 この際はっきり言わせてもらうけど、鏡花ちゃんがあいつの中で肉に勝つのは無理だよ。 それこそ、豆腐の角で頭を割るようなもんだ。 肉に勝とうなんざ諦めて、人類の中で一位とか、食いモン以外で一位とか、それじゃあダメなのか?」
音二郎は弟をあやす様な声で鏡花を諭した。 しかし鏡花の方は全く納得いかないというような態度で、
「いや、ダメなんだよ。 男なんだから、牛肉なんかに負けていられるか!!」
「はいはい……」


――結局この議論は決着がつかなかった。 疲れ切った鏡花は、
「自分でもう一度考えるっ!」
と言い捨て、出て行ってしまった。
「騒々しいなァ。相変わらず」
音二郎はぼりぼりと頭を掻きながら考える。
(肉に負けていると思ってんのは鏡花ちゃんだけなんだよな……。でも、あいつは芽衣に母親並みの愛情を求めている。 いや、それ以上の深い愛を。 それを鏡花ちゃんに気付かせるのも酷だし、何より芽衣の負担になりかねない。このままっていうのも、俺的にはどうかと思うが……)
「どうしたもんかなァ……」
音二郎のお節介による苦悩は、まだ終わりが見えない――。

 

「お節介焼き音二郎」 - 即興二次小説